小話「国士無双」
はじめに一つの質問を投げ掛ける。
「あなたは小学生とゲームをすることになったとする。本気でやれば圧勝できるのは明らかなのだが手を抜くか?」
自分ならどうするか考えた上で、読んでみて欲しい。
「国士無双」
これはとあるクソガキが親戚の家に泊りにいった時のことである。
親戚一同で麻雀をやっているのを見たクソガキは自分も混ざりたいと言う。
クソガキが即座に覚えられるゲーム性ではないため、祖母にアシストしてもらいながらやることとした。
麻雀を楽しもうとしていたクソガキに、突如青い稲妻が鳴り響く。
「ロン 国士無双 32000 終わり!」
下家の叔父がクソガキにこう言い放ったのである。
そう、クソガキはデビュー戦の東一局で国士無双に振り込んだのである。
クソガキは泣いた。嗚咽した。
漂う不穏な空気。稲妻を轟かせた雲は引くことを知らない。
雲は笑う。「国士無双だから和了(あが)った」と...。
※このお話はノンフィクションです。
話にでてくるクソガキとは僕のことである。
たぶん叔父は、国士無双というレア役でなければ見逃してくれたのだろう。
理由はどうあれ、容赦なく瞬殺されたお陰で火が付いた僕は麻雀の勉強を独学で行い、大人とも張り合えるようになった。
今でこそ思うが、僕に対する接待プレイは不要だったんだなと思う。
考えてゲームをするきっかけをくれた叔父には感謝している。
僕の一番好きな役は、国士無双なのだ。